Piano & A Microphone 1983 / Prince ('18)

昨日リリースされたプリンスの未発表音源集「ピアノ&ア・マイクロフォン 1983」。
レビューはNPG Prince Siteに書きましたが、一部コピペ文はありますが、もう少し違う表現で書いておこうと思います('-')


曲リスト

1.17 Days
2.Purple Rain
3.A Case of You
4.Mary Don’t You Weep
5.Strange Relationship
6.International Lover
7.Wednesday
8.Cold Coffee & Cocaine
9.Why the Butterflies

未発表との付き合い方...

レビューの前文にしてはちょっと長くなります(´д`)
未発表音源の取扱についてはプリンスに限らずファンにとってとてもデリケートな案件だと思います。
貴重な音源が聴けるという喜びの反面、本人の意思が介在出来ない以上“諸手を挙げて賛成”という気にはなれません。

特にプリンスは以前から自身のレコーディング・スタジオ”ペイズリー・パーク(Paisley Park)”に膨大な音源を収めている事で有名で”毎年1枚リリースしても一生分以上ある”と言われてました。

劣化しないプリンスとは言え”不死身”では無いので、残される音源の行方は度々インタビューで話す事がありました。
2014年に行われたローリングストーン誌のインタビューで、”この世を去った後に未発表の音源をリリースしてもらいたいですか?”という質問に対し・・・

No, I don’t think about gone.
I just think about in the future when I don’t want to speak in real time.

いや、僕はこの世を去る事についてはそう考えていない。
僕がリアルタイムで話せなくなった時のことだと思う。

という風に語っていました。

リアルタイムでプリンスの言葉が聞けなくなった今、代弁者となったのは資産を管理するエステートです。

プリンスの"意思"や"楽曲への思い”をエステートがどれだけ汲み取ってくれるか期待と不安の中、そして60歳の記念となる’18年6月7日に「Piano & A Microphone 1983」を9月21日にリリースする事が発表されました。

作品について

’87年にペイズリー・パーク・スタジオが完成するまで色んなスタジオでレコーディングをおこなっていましたが、最も利用していたのはミネアポリス郊外のチャンハッセン(チャナッセン)にある自宅のホームスタジオ”キオワ・トレイル・ホーム・スタジオ(Kiowa Trail Home Studio)”で、’85年1月頃まで利用していたこのスタジオから数多くの名曲を生み出しました。

その膨大な音源の中からワーナー(エステート)が”初の未発表音源集”という"纏まった形"でのリリースに選んだのは、タイトル通り1983年にこのスタジオでカセットにレコーディングされた未発表のピアノ弾き語り音源です。
(プリンスの想いが入ってないんでアルバムとは表現しません)
自宅にスタジオがあったからセールス的にはここを推してますが、勝手にプリンスの想いを代弁するなら”うちのピアノで適当に歌っただけだから人に聴かせるもんじゃない”レベルの音源です。

とは言え何事もフル・パワーなプリンス、スタート直前に話す貴重なプリンスの生声の後、力強く鍵盤を叩く音と激しくも優しい歌声の“17 Days”、そして1分半と短いものの翌年リリースされるPurple Rainの成功を予感させる“Purple Rain”と聴いていて鳥肌が立ちます。

流れる様に続く形で演奏されるプリンスが敬愛するジョニ・ミッチェルのカヴァー”A Case of You”は、’02年リリースのOne Nite Alone…と比較しても遜色ない1曲ですがこちらも1分半と短いのが残念。

”Mary Don’t You Weep”はアメリカの南北戦争(1861-1865)の頃に歌われた黒人音楽で、その歌詞から’18年8月に公開されたスパイク・リー監督映画『BlacKkKlansman』のエンド・クレジットでも使用されました。
('94年のライブではレニー・クラヴィッツと一緒に歌った事も...)


4年後となる’87年のSign O’ The Timesに収録された”Strange Relationship”のベーシック・トラック、1999収録の”International Lover”といった既発曲のピアノ・バージョンも貴重ですが、ジル・ジョーンズのヴォーカルで「Purple Rain」に使われる予定もあった“Wednesday”、しゃがれ声で歌ってる“Cold Coffee & Cocaine”、プリンスが曲を作る過程を体験している様な感覚になる”Why The Butterflies”の後半3曲の未発表曲も聴きごたえがあります。

音源自体は過去に海賊盤でリリースされたものなのでマニアの人にとっては聴き馴染みのあるものですが、キチンと音質調整を施された本作からはプリンスの息遣いが間近で聴こえる素敵な音源になっています。(ヘッドホンで聴けば尚良しって感じですね!)

プリンス・エステート側もMVを作成

エステート側もリリース日に合わせて”Mary Don’t You Weep”のMVを発表しました。


監督はザ・ウィークエンド等のMVも制作したSalomon Ligthelm。
撮影はNYで、近年アメリカで起こっている黒人に対する銃の問題を表現した内容になっています。
サロモンは以前にもOUR FUTURE IS IN BALTIMOREという映像を撮っているんで、お互いの方向性が似ているという事からの起用なんでしょうね。

最後に...

今回リリースされた音源から聴かれる若きプリンスの歌声やピアノはとても素晴らしいもので、この未発表曲集が聴けた事には満足しています。

プリンスの資産を管理するエステートのトロイ・カーター氏によれば、タイトルは’16年に行われていた同名ツアーをリスペクトした形をとったそうですが、”1983″が追加されているとは言え、正直このタイトルは’16年のライブ盤リリースして使って欲しかった…
というのも’16年4月初め、「ピアノ&ア・マイクロフォン・ツアー」のアトランタ公演から30分の音源を公開、そしてライブ・アルバムのリリースを計画していました。

プリンスそして当時コンサートを楽しみにしていたファンの想いを少しでも汲んでくれるのであれば、作業中だったプリンスの仕事を完結させリリースして欲しかったです。
もしくは2016年の”Piano & A Microphoneツアー”のライブ盤に”ボーナス・ディスク”として付けて欲しかった、タイトルの意味も納得出来るしプリンスの凄さをより多くの人に伝えれるのに...

冒頭にも書いた通り代弁者となるエステートの思惑でリリースされるんでしょうけど、こういう未発表作が出る度に”あぁプリンスがいたら絶対コレ出さなかっただろうな…”と言うのがリリースされ感傷的になるんだろうなぁ😥


内容は良いのに売り方が気に入らないって情緒不安定な文章になって申し訳ないです。

デラックス盤

今回、上記のCDの他に。CD+LPが付いたデラックス盤もあります。
通常盤はプレス・リリースの抜粋、プリンスの当時エンジニアだったドン・バッツによるライナーノーツが掲載。
一方デラックス盤は12インチ・サイズのブックレットにドン・バッツによるライナーノーツ、リサ・コールマンとジル・ジョーンズのライナーが掲載、加えて未公開のスナップ写真(表紙・裏表紙を除く10ページ中、写真は3枚、直筆メモが2ページ)が収録されています。
(また通常盤のCDはmade in Japan、デラックス盤は輸入盤と同じ)



上に書いた様に2016年の”Piano & A Microphoneツアー”または時代的に「1999」のリマスターと一緒にボーナス・ディスクで出してくれたら良いのにって思える9曲入りの音源をファン心理を利用して”ブックレットが欲しけりゃLP付きを買いなさい”という売り方も正直好きになれません...

追記

上記を書いた時点では現物が無い状態で書きました。
今日手元に届いて見てみると歌詞(日本語対訳も)も無し....楽曲の良さを書きたいのにパッケージングの愚痴が多くなるなんて(-_-)

あとこれはしょうがないんだろうけど、エステートのラブ・シンボルが1983年と合わないなぁ・・・文字だけで良かったと思うんだけどな。



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